ULTERIORと陰翳礼讃


気が付けば春が去り梅雨が開けようとしています。
まだ夏も来ていないのですが、僕らにとっては楽しみな秋冬服の入荷の時期です。
今年2020年秋冬から新しくお取り扱いを始めましたULTERIORについて、今日はお話しさせて頂こうと思います。




ULTERIORはサヴィー/salvy;のデザイナーを務めていた牧大輔による新ブランドで2019年AWからスタートしたブランドです。
1980年代にアメリカで発行されていた「WET Magazine」の元編集長レナード・コーレン(Leonard Koren)による書籍「Wabi-Sabi」や谷崎潤一郎の随筆「陰翳礼讃(いんえいらいさん)の世界観を意識し、日本人の根底にある美を意識したコレクションを発表しています。




私もこの機会に一度こちらの書籍を読んでみようと思い書店で手に取りました。
内容を簡単に要約すると大正時代ごろに日本に持ち込まれた西洋的な美の感覚とそれ以前の日本に存在していた美の感覚を様々な例を挙げて比較するものとなっています。




こちらの本は考え方や切り口が非常に面白いのももちろんなのですが、表現力が言葉では言い表せないほど素敵で読んでるうちに世界観に引き込まれていきます。




少し話が逸れてしまいましたが、文中にも挙げられています茶室を例に本の内容について少しだけ具体的にお話しさせていただくと、日本古来の茶室(数寄屋造)の部屋は光があまり入って来ない作りになっており、やわらかく差し込む光に照らされたお椀が見る角度によって様々な表情を見せる様を、美しいと思う感覚こそが日本人の根底にある美の意識だと筆者は述べています。




煌々と照らされた豪華絢爛な部屋のピカピカなコップで紅茶を飲む西洋人と影と質素を好む東洋人では根本から美的感覚が違います。
ただここで筆者が述べているのは日本人は文明を捨てて昔の暮らしに戻るべきだと述べているのではなく、例えば電球を用いた行燈のように西洋の文化をうまく日本に合う形で落とし込んでいくことがこれからは大事になってくると述べられています。




そういった意味では、洋服で陰翳礼讃的な感覚を表現しているULTERIORはまさに谷崎氏の言っている日本人に合う形で洋服に落とし込んでいるのではないかと私は思いました。
長くなりましたが実際のアイテムを見ながらお話をさせていただきます。




ULTERIOR / OVERLAID STANDARD STRIPE SHIRT “UMBER”

24,000+TAX




2020AW最初に届いたアイテムはOVERLAID STRIPE SHIRT です。
直線的な線ではなく点によって表現されたストライプはさながら日本庭園の砂紋の様です。




ULTERIOR / OVERLAID STANDARD STRIPE SHIRT “OFF”

24,000+TAX




襟裏部分にはULTERIORのシャツを象徴する生地の重なりが施されており。
着物の前合わせを連想させるとともに左右非対称の不揃いなところに美を求める私たち日本人的なセンスを感じます。







日本の刺し子生地を使ったり着物ジャケットを作ったり和装そのものからインスパイアされたブランドはあれど、もっと奥深い所での日本を表現しているブランドはそう無いと思います。




ULTERIORの服は着ていて落ち着くとともに、私たちが失いかけている根本的なものを思いだせてくれる服だと私は感じました。







NAOTO